数々のコンテストで受賞歴を誇り、カットを極めている『ガルテ』代表のATSUTOSHIさんと『Creed』代表の宇佐巳大介さんが登場。ストイックなまでにカットを追求し、後進の指導にも熱心なおふたりに、卓越した技術と理論、そしてカットにかける思いを披露していただきました。
完璧と思えるまで練習あるのみ井の中の蛙になることなく、常に成長し続けたい
――カットに目覚めたきっかけは?
美容学校2年のときに出場したコンテストで優勝し、自信が持てたことです。それまでなかなかうまくできなかったのですが、結果を出したことで勝ち方もわかり、成長速度が早まりました。
――カットをどう身につけた?
21歳のときに渡英し、ヴィダル・サスーンアカデミーで半年学びました。同年代ではうまいほうだと思っていましたが、そのときの先生が僕と同い年で僕より上手だったことに衝撃を受け、追い込まれた感覚になりましたね。そこでカットの基本を徹底的に学び、帰国後、『ガルテ』をオープンしたのですが、日本人と外国人とでは髪質も骨格も違うため最初は思うような結果が出ず……。日本人にアジャストし、自分なりのカットの形が見えてくるまで2年かかりました。
――コンテストに挑む理由は?
自分の技術の確認のためでもあり、モチベーションを保つためでもあります。井の中の蛙になってはいけないですからね。僕はもともと「日本一カットがうまい人になる」というのが目標ですから、コンテストは重要な機会だと捉えています。
――練習は常に行っている?
コンテストの直前は特にそうですね。朝6時からウィッグと格闘することもザラです。サスーンで学んでいるときも朝一で登校し、先生を捕まえてウィッグのチェックをお願いしていました。ダラけている生徒を見つけると「何しにロンドンまで来たの? もっと練習しなよ!」と人にまで練習を押し付けるストイックさでした(笑)。完璧と思えるまでずっと練習したいんです。自分のフェーズが上がれば上がった分だけ次の理想が見えてきますから、無限に練習は続くのだと思います。
――カット勉強中の方にメッセージを。
ウィッグで基礎ができたら、できるだけ人間(モデル)で経験を積みましょう。カットは悩みを解決する手段であることが多いので、クセや毛量などを考えてアプローチすることが大事です。頑張る人と頑張ってない人との差が大きい時代ですが、逆に頑張れば誰かの目に留まって認められる時代。認められるまで頑張り続けましょう。
繊細な仕事には極小シザーが最適

「とても小さいシザーを愛用しています。もともと5.0インチでしたが、研ぎ続けた結果、4.5インチくらいに。細かい作業がしやすく、ベースカットに欠かせません。サスーンのコームは色がゴールドなのでスタッフと被りがなく、お気に入りです。シングルピンは、グリップ力が弱く、髪に跡がつきづらいのでよく使っています」
魅せるカット by ATSUTOSHI / GARTE
tyle Theme「セニングを使わずに 質感と量感をつくる」
before



髪質は細い、柔らかい、毛量はふつう。ほとんどクセはなく、ブリーチによるダメージがある。
after



髪の長さに長短をつけながらベースカット。コーミングすれば収まり、毛先を遊ばせればカジュアルに。
step 01

ウェットでハチの1㎝下〜つむじに向かってラインを下げて上下にブロッキング。ダッカールを使うとクセがついてしまい、見た目もよくないので、コーミングのみで分け取る。
step 02

サイド第1線はオンベースに縦スライスで引き出し、垂直にブラントカット。もみあげの位置は切らずに残し、根元〜中間にだけレイヤーを入れる(ディスコネ)。第2〜4線も同様にカット。
step 03

イヤー・トゥ・イヤーまで切り進んだ後、目尻の横の毛をカットしてアウトラインとつなげる。こうすることで目のまわりをすっきりさせる。
step 04

バック第1線はヘムラインと平行にセクションを取り、オンベースに引き出してカット。
step 05

バック第2線も同様にセクションを分け取り、オンベースに引き出しブラントカット。バック第3線はネープエリアに近づくにつれてパネルをややリフトさせてカットし、長さを残す。同様に正中線まで切り進む。
step 06

カットした方向と逆の横スライスで引き出し、チェックカット。右サイドも同様にカットする。フロント第1線(前髪)はおでこの真ん中くらいを目安にブラントカット。
step 07

フロント第2線は右側から切り始め、右サイドをガイドにオンベースで引き出し、レイヤーを入れる。左側にいくにつれて長くなるように切り進む。
step 08

フロント第3線は7と逆に、左側から左サイドをガイドに切り始め、右側が長くなるようにカット。つむじまで同様に交互に切り進み、トップより後ろはやや短めにカットする。
step 09

トップを真上に引き出してバックのガイド+1㎝にカットしてディスコネに。ドライ後、前髪をフリーハンドでギザギザにし、バックの重い部分はポインティングで削る。

How to
COLOR/全頭ブリーチ後、ペールトーンのバイオレットに塩基性のピンクを20%ミックスして15分自然放置(ox3%)。STYLING/マット系のワックスを全体に塗布。
※記事は取材時のものです
photo:Okumura Koki text:Morinaga Yasue
make-up:UNO Yumi model:Mito Asuka トップス/yolifu(Clique Tokyo)