30年という長い歴史の中で、『ダブ』が“老舗”にならず、常に最先端を走り続けるのは大きな懐の中で、次々登場する若手のリーダーたちが自由な挑戦をしているからかもしれない。『ダブ』のイノベーターとして注目される、HARUTOさんと私市龍星さんに、今の思いをうかがった。
Tradition and Innovation/Works by HARUTO(DaB)



Tradition and Innovation/Works by KISAICHI RYUSEI(DaB)




interview
美容業界を刺激する、『ダブ』の愛すべき風雲児たち
HARUTO & KISAICHI RYUSEI

プレッシャーを与えてくれる仲間がいるおかげで、どこまでも頑張れる。
巻頭特集という機会をいただき、いわゆるクリエイティブ作品ではなく、イメージ寄りの表現で自分たちの振り幅を見せたいというところから、今回の構想がスタートしました。美容師はヘアだけに集中しがちですが、トータルでかっこいいかどうかを客観視し、スタイリストさんなど、美容師ではない方の意見も取り入れました。
今回、ショートのモデルは撮影中に急遽カットしたんですけど、それは撮ってみたら僕がイメージしていたものと少し違ったから。ヘアとしてはかっこよくても、全体で見たときにもっといいバランスがあると思えば、すぐに変えます。僕はコンテストの競技中であっても、そこに立つモデルに対して「これがベストなのか?」と問う感覚を大事にしています。時には前日まで練習してきたものと違うものになることも。ただ、それができるのは練習の過程でいろいろな要素を試して、引き出しを増やしているから。だから僕はめっちゃ練習するんです。
コンテストは2年前に初挑戦して、そのときは準グランプリ。それがすごく悔しくて、リベンジのために、翌日からモデルを探して必死で練習しました。昨年、同じコンテストで優勝することができました。それができたのは仲間たちのおかげ。『ダブ』のスタッフはみんな美容が好きだし、先輩だけじゃなくて後輩もケツを叩いてくれる。私市も1歳下ですが、コンテストでいうと私市のほうが先に大きなタイトルを獲っていて「次はHARUTOさんの番です」って言うんです。そんなの言われたら頑張るしかないじゃないですか(笑)。翌年、一緒に出たコンテストのグランプリで僕の名前が呼ばれた瞬間、いちばん最初に立って喜んでくれたのも私市。お互いの努力を間近で見ている戦友ですね。
ですが僕はコンテスターになりたいわけではありません。純粋に美容業界が盛り上がればいいなと思うんです。コンテストは労力もお金もかかるし、命を削るような挑戦。それでもそこにロマンを持ち、若手がもがきながら頑張っているところを、いろんな人に見てもらえたらいいなって思います。
僕が日々やっているのは美容師だから、まずは目の前のお客さまを幸せにするのがいちばん。リアルスタイルも、クリエイションも、ケミカルも全部好きなので、何かに偏らず、自分の仕事を楽しいものにしたいなと思います。
creation


ファッション誌や洋書からインスピレーションを得て、ロケ撮影を敢行。森の中に、海外の街中を歩いていそうな、かっこよくてかわいい女性像を組み合わせた。フレンチっぽいショートと、クセ毛のようなボリューミーなボブを、日本人モデルに落とし込み、個人の魅力を引き出すのがHARUTOさん流。
HARUTO
はると。『ダブ』代官山店副店長。日本美容専門学校卒業後、2018年に『ダブ』入社。パーマ技術やブリーチなどケミカル知識を得意とし、社内外でのセミナー講師としても活躍。ヘアコンテストにも挑戦してわずか2年で、2024年THAモデルクリエイション部門グランプリ受賞。Instagram @haruto_0210

ファーストペンギンになって目立ちたい。それが僕の原動力。
『ダブ』で培った〝ヘアにかける志〟に、ファッション感を掛け合わせたのが今回の作品です。美容師のクリエイションは8、9割をヘアに注力しがちですが、今の時代的にファッション性と写真1枚の世界観っていうのが大事だと思ってて。だから僕自身はファッション8割、ヘア 2割ぐらいの感覚。ヘアがいくら決まっていても、構図や色味、世界観が決まってないとまずその写真に目がいかず、結局ヘアも見られないと思います。
僕はコンテストにも力を入れていますが、シンプルに目立ちたい気持ちが強いんです。何事もいちばん先にやるのが好きで、誰かがすでに達成したことを追うより、同世代がまだ優勝していないコンテストを狙いたい。ファーストペンギンより強いものはないと思ってるので。コンテストで勝つために、街を歩くときも、人はどんなヘア、ファッション、色に目が行って、どんなオーラに惹かれるんだろうとずっと考えています。生活のほぼすべてが美容。でも意外と睡眠はちゃん取っていて、練習中に脳が働かないなって思ったらすぐ寝ます(笑)。できる時間で最大限をやるんです。情報収集にはスマホもめっちゃ使いますけど、それで完結せず、その後に洋服屋や書店に足を動かして体感するようにしています。でも、あくまでも僕はサロンワーカー。その延長線上にクリエイションやコンテストがあるぐらいの感覚です。
この10月からはミックス店の副店長になりましたが、後輩たちは背中を見せれば勝手に育ちますし、無理強いもしたくありません。ただし撮影やコンテストを手伝ってくれる後輩たちが、心からかわいいと思ってくれるような作品をつくらないと、後輩の成長はないので、それが自分に課している責任です。
『ダブ』は外からみると方針が定まっているように見えるかもしれませんが、いい意味でかなり自由。 そして与えられた自由をちゃんと極めている人が多い。SNSで頑張る人、売上げにこだわる人、クリエイションに力を入れる人。それに対して上層部の人たちが数字だけではない評価をしてちゃんと褒めてくれる。人のことを気にせず好きな分野で頑張らせてくれて、時代に対して柔軟なところが『ダブ』のすごさ。学生時代に強い憧れを持って入社したサロンが、いつまでもかっこいいサロンであるよう、これからも僕たちは頑張ります。
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ヘアもさることながら、ファッションと、1枚の写真で伝える世界観にこだわった作品。森の中で布を垂らした背景を想像しながら、衣装の柄の分量を微調整し、髪色は金と茶のみに。引きでの画角をふまえて、骨格や頭身バランスがモデル選びのポイントとなった。
私市龍星
きさいちりゅうせい。『ダブ ミックス』副店長。1998年生まれ。国際文化理容美容専門学校国分寺校卒業。ブリーチや、パーマを強みに若い世代に支持される。クリエイションにも注力し、2024年のウエラトレンドビジョンアワードでは、クリエイティブアワードでゴールドプライズを受賞。Instagram @dab_kisaichi
photo:Sano Kazuki (CHIYODA STUDIO) styling:DOREMI text:PREPPY
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