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16 Nov 2025
16 Nov 2025
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「女性の仕事師」 氏川りのさんの美容師人生

三都杯でグランプリを獲得するなど実力派コンテスターとして名高い『ニコヘアー』(高知県高知市)の氏川りのさん。走り続けてきた20年の美容人生。40歳となる今年、ひとりの美容師として、ひとりの女性として、その生き様、これからの目標をうかがった。

美容師になろうと思ったのはなぜ?

女の子がどんどんかわいくなる様子を見るのがうれしくて

祖母が訪問販売の美容部員だったんです。それで、美容師免許はないものの、顧客にヘアスタイルの提案なども行っていて、子どもの頃は祖母が髪を切ってくれていました。そんなことが背景となり、私、小学校の頃からファッションリーダー的な存在だったんです。友人から「デートがあるから」とヘアメイクを頼まれることも多く、女の子をトータルプロデュースすることでどんどんかわいくなっていくのが楽しかったんですよね。だから、中学生の頃には、もう美容師になることを意識していました。
刺激的な生活を求めて、都会の美容専門学校に通いたかったのですが、お金もかかるので、就職で地元を離れようと画策。でも、もともと体の弱かった母の体調が悪くなってしまい……。大阪のサロンに就職が決まっていたのですが、高知に留まることにしたのです。

アシスタント時代もバリバリに活躍していたの?

思うように美容師として成長できないジレンマに

最初に入社した美容室は、高知市内から離れた四万十市にあるリラクゼーションサロン。美容師としての仕事よりスパの仕事を任せられることが多く、美容師として成長したい気持ちとのジレンマがあったんですよね。そんなとき、グループ店舗の先輩が独立するというので、私も一緒に着いていくことを決意。次の店舗は若い子が集まるトレンドサロン。そこでやっとカット練習を始めることができました。
2店舗目で迎えたアシスタント4年目、結婚を機に高知市内に引越し、転職を考えていたとき、「りのちゃんにピッタリのサロンがある」と紹介されたのが『LABOON』(現『ニコヘアー』)。デビューできていなかったので、代表の大野(紘一)さんが「3カ月でスタイリストになるように頑張ろう!」と言ってくれ、本当に3カ月でデビューすることができました。

クリエイションを始めたきっかけは?

代表の大野さんと手探りでクリエイション撮影を始めて

『ニコヘアー』に入社したのは、オープンから1年ほど経った頃。サロンもまだ集客が必要だったので、「サロンとしての強みがほしい」と毎日サロンスタイルを撮影していました。でも、コンテストにも出るようになったあるとき、コンテスト会場で、「ブックはないの? クリエイションはやってないの?」と審査員に聞かれたんです。“クリエイション”というものがなんなのかも知らず、そんな世界もあるのかと、手探りでクリエイション作品をつくるように。
大野さんと私、二人で協力しながら毎日クリエイション撮影を行い、作品をつくっていました。お互い初めてのことなので、ぶつかることも多かったですね。2年ほど、毎日クリエイション作品をつくっていたら、知らぬ間にクリエイションサロンとして知名度が上がっていました。

これからもコンテストに参加するの?

三都杯のグランプリを獲り、燃え尽きたかと思ったが……

昨年、「三都杯」でグランプリを受賞することができました。ずっと獲りたかった賞ですし、もうこれ以上のものはつくれないと思うほど満足度の高い仕上がりだったんです。でも、大野さんが「念願叶って、賞が取れたのだから、これからは自分がつくりたいものをつくればいい」とアドバイスしてくれたんです。そう言われたことで、今まで、自分を誇示して勝ちにいっている自分がいたことに気づいたんです。同時に肩の荷が下りたというか、今の自分をそのまま受け入れようと考えるようになりました。
そして、今年6月、“アジア・ビューティエキスポ”で行ったヘアショーは、三都杯を上回るほどの仕上がりに。そのとき、自分は確実に成長しているんだと感じることができました。だから、これからも“今”を超える作品をつくり続けたいと思っています。

今後の目標はありますか?

仕事の活動範囲を広げ、いろんなことに挑戦したい

外部の仕事として、ヘアメイク活動も行っているので、「ヘアメイクアップアーティストの氏川りの」としていろんな現場から声をかけてもらえるようになりたいですね。そのためにも、今までと同じように目標を定め、行動し、結果を出すだけ。今、海外の方が私の作品を「おもしろい」とコメントくださることも。有名ファッションスタイリストの方やメーカーさんなど少しずつ、いろんな方面からお声がかかるようになり、新しい世界が広がりつつあります。
サロンワークをメインに、コンテストに出て、ヘアショーに呼ばれ、セミナー講師も。プライベートで活動しているバンドでライブを行い、絵を描き、今度個展を開きます。「大変だね」と言われるんですが、全然大変じゃないんです。これからもずっと楽しい毎日にしていきたいと思っています。

Work -氏川りのさんのヘア作品-

PREPPY2025年3月号で行われた誌上コンテスト“リアルトレンド”参戦時の作品。「GO GLOBAL」をテーマに、日本らしさを折り込み、梅をイメージさせる赤いヘアカラーとストリートファッションを融合させた。
Photo:Matsuyama Yusuke(CHIYODA STUDIO)

こだわりのWORK ITEM

人生を変えた『ニコヘアー』代表、大野さんとの出会い
「仕事上、なくてはならないものは何か」とたずねると、サロン代表、大野さんの存在と回答。クリエイションに進んだことも含め、出会いが氏川さんの人生を変えた。

確実に自分を成長させてくれるコンテスト
コンテストに出るときは、今の自分を否定し、「勝たなければならない」という強迫観念にとらわれるという。しかし、その先には、確実に成長した自分がいるのだ。

仲間と組むガールズバンド“サンカッケー”
去年、ニット作家や古着屋でアクセサリーをつくっている仲間と3人で始めたバンド活動。みんな、ものづくりが好きなので、コンテストを手伝ってもらうこともあるそう。

photo:Ujikawa Rino(niko hair) 

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photo:Ujikawa Rino(niko hair) 

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︎︎text:PREPPYphoto:Ujikawa Rino(niko hair) 

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photo:Ujikawa Rino(niko hair) text:PREPPY

Art director

niko hair 氏川りの

うじかわりの。『ニコヘアー』アートディレクター/副店長。高知理容美容専門学校卒業。テーマ性を強くもったクリエイティブなヘアデザインを得意とし、2024年「三都杯」デザイナーズコンテストでグランプリを受賞するなど受賞歴多数。

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