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5 Aug 2025
5 Aug 2025
beauty

【Magic Touch Vol.3】進藤郁子が教える、ヘア&メイクのさじ加減

ヘアメイクアップアーティスト進藤郁子さんの今連載では、「色」をテーマに1人のモデルをふたつの女性像で表現する。「マジックタッチ」第3回は「茶色」。身近に存在する色ゆえ、どう発想を広げていくのか。完成したその作品世界をご堪能ください。

ていねいな茶色とよそおいの茶色

色から連想するディテールを言語化

「茶色」から2つのイメージを固め、具体的なビジュアルをつくるための設計図を描く。

ていねいな茶色

ナチュラル系メイク
keyword:年輪、寛容さ、ワントーン

イメージ
シックさを担保しながら、洗練させる。まるで年輪や地層のようなていねいな重なりを想起。


線は太く直線的に、陰影は縦に連ねる。個性とおもしろさを線とフォルムに託す。

質感
主役は軽やかなマット感。重くなく透けるような質感を目指す。

色味
濃淡の異なる茶色を重ねる品格のあるワントーン。

よそおいの茶色

リアリティブ系メイク
keyword:民族、反骨精神、シンメトリー

イメージ
民族音楽とロックが融合する「民族パンク」のような強いアイデンティティと自己表現。


左右対称であることを前提にしてラインとぼけ味を調和させる。

質感
汚し系までいかないムラっぽさ、きらめき。相反するテクスチャーを織り込む。

色味
ゴールド、ピンク、赤。茶色とお互いに引き立てる色の選択。

制約がある中で新しい視点が生まれる。

木々や大地。自然の中に数多く存在し、私たちにとってとても身近な茶色。癒しや落ち着きを与えてくれる色ですよね。茶色の持つ大人っぽさやシックさを2作品とも担保することが今回の発想の出発点でした。そのうえで違いを持たせるためにはどうしたら? キーワードとなったのが「精神性」です。「内に秘めるパワー」と「外に向かうエネルギー」というマインドからイメージをふくらませていき、ワントーンメイクと民族調のメイクに挑戦しました。
自分の好きなものばかりではなく、テーマを決めてメイクを考えていくことは新しい発見にもつながります。一歩間違うと老けて見えてしまったり、コンサバにまとまったり……。茶色のリスクを避けながら単調にならず、決してはみ出しすぎないように。差し色が目立つと茶色は脇役に回ってしまうという難しさもあります。そこで色の入れ方や重ね方、肌の質感、パーツの強調、相性のいい色の選択など細部にこだわりながらテーマを追求していきました。狭いところを狙うおもしろさ。そのあたりも感じて2つの作品を見てもらえたらうれしく思います。

今回のモデルのBefore
キメが細かくなめらかな肌質。ブルーベース。パーツがはっきりとした顔立ち。

進藤流メイクのヒント

01 品格と抜けのバランス

濃淡のつけ方、遊びの入れ方
たとえば、色を濃く重ねると落ち着きすぎてしまい、淡くするとやさしくなるけれどどこかおもしろみに欠けてしまう。そこで遊びの要素を増やしていくと、今度はシックさから離れて品が損なわれてしまいます。品格と抜け感、双方のバランスを探ることはメイクを考えるうえでの必須事項。茶色に限らず、どんな色のときでも注意したいポイントです。

02 隠し味的な工夫

色に頼らず、工夫を凝らす
色自体の個性が強ければ、ポンとそのままのせることで完結することもあるでしょう。でも、茶色のような調和してなじむ色はそうはいきません。たとえば、アイラインを外ではなく内側に引く、チークを横ではなく縦にぼかす、ていねいにベースを重ねて端正な肌をつくる。テクニックを吟味し施すことで、色に頼らずに個性と深みを出すことができます。

03 現場の光とテクスチャー

光の中で髪がどう見えるか
光の強弱やまわり方で髪の質感は大きく変わります。当初Case1は前髪のふわふわ感を出すつもりでしたが、予定を変更。光が挿し込む陰影の中では、ミニマルに抑えるほうがベターと判断しました。その分、額が見える分量を増やし抜けをプラス。Case2はまとまりのある毛束を大胆に動かし、ビッグシルエットになりすぎない遊びを狙っています。

process ていねいな茶色
軽やかなマット肌が、茶色の濃淡を生かす

1.マットな質感の下地でサラッとした軽やかな肌をつくる。パール粒1個分を取り、全顔になじませる。

2.肌と同じ明るさのペンシルコンシーラーで目の下のクマ、小鼻、口角の影を消す。直接肌に塗り、指の腹でトントンとたたいてぼかす。

3.右半分はコンシーラーを塗った後、左半分はコンシーラーを塗る前。影やくすみがカバーされ、端正な印象をつくる。

4.パウダリーファンデーションをブラシに取り、ふわりとのせる。ブラシを使うことで薄づきになる。

5.マットなグレージュカラーのアイシャドウをブラシに取り、上まぶた全体に広げる。

6.ゴールドの偏光アイシャドウを下まぶたにオン。平筆に取り、目頭から目尻までのせる。

7.ブラウンのペンシルアイライナーでインサイドラインを引く。まつ毛の生え際の粘膜部分を埋めて目元を引き締め、さりげなく強調する。

8.アイブロウコンシーラーで眉を明るいベージュにチェンジ。眉尻から、毛流れに逆らって起こすように、根元からしっかり塗る。

9.ブラウンのリップベンシルで唇の輪郭を取る。もともとの唇よりオーバーぎみにして直線的に描く。

10.明るいベージュのリップをブラシに取り、内側にぼかし広げる。その後、何も付いていない空のブラシでリップラインと軽くなじませる。

11.コーラルからベージュ系のチークをブラシに取り、縦にポンポンとずらしながらのせる。横に入れると落ち着いて見えるため、縦に入れてハズす。

FINISH

process よそおいの茶色
茶色と相性のいい色を使い、民族調のニュアンスに。

1.目のまわりのみコンシーラーでカバーし、シェーディングを。肌よりやや暗めのクリームシェーディングをほお骨から広範囲に広げ、スポンジでトントンとぼかす。

2.メンディングテープを下まぶたのカーブの延長線上に貼る。左目も同様。

3.ブラウンのリキッドカラーを上まぶたに指でのせる。

4.ブラシでくるくるとぼかし、眉の上、目尻の外側(テープの上)まで広げる。眉の下がいちばん濃くなるようにする。

5.メンディングテープを剥がす。テープで保護することで、目尻に直線的なラインができる。

6.レッドのアイシャドウを細筆で上まぶたの中央にのせる。少し雑に入れるくらいでOK。

7.メタリックパウダーをミキシングリキッドで溶く。特殊メイクで使う目の粗いスポンジを小さくカットし、スタンプを押すように目尻にポンポンとのせる。

8.6と同じレッドのアイシャドウを目の下の中央にのせる。その左右隣に濃いブラウンのアイシャドウを引いてぼかす。

9.青みピンクのリップをラフに塗る。ブラシに取って左右にササッと動かす。

10.7と同じメタリックパウダーを綿棒に取り、ちょんちょんと目尻にのせる。

11.そばかすや肌のムラっぽさをイメージする。こげ茶、ベージュ、黄色のチークをほお骨のまわりにのせ、その下にピンクのチークをのせる。指の腹でぼかす。

FINISH

ていねいな茶色

Make-up

・濃度さまざまなブラウンを重ねるワントーンメイク。
・直線的な2層のリップ、縦に入れるチークでスパイスを効かせる。
・目元はていねいに描き、眉毛は抜け感を出して軽やかに。

Hair

・スカーフ使いで顔まわりにアクセントを出す。
・黒髪の持つ大人っぽさを、最小限に見せることで強調。
・ツヤと面の中に毛先のハネで小粋さをもたらす。

よそおいの茶色

Make-up

・服と髪はパンク、顔は民族調。サンドイッチして新たな見え方にトライ。
・ゴールド、赤、ピンクで民族的な彩りと土臭さを表現。
・ムラっぽさとなじみのよさ。細部にこだわり、シックさを担保する。

Hair

・外向的なエネルギーを感じる、上に向かうシルエット。
・ちょっとヤンチャなくらいの遊び心のあるヘアスタイリング。
・手グシを通して髪を大きく動かし、ベストなバランスを見つける。

photo:Matsuyama Yusuke(CHIYODA STUDIO) text:Sugiura Akiko styling:Kawakami Maruri
進藤さん着用黒トップス¥5,500(CASPER JOHN/Sian PR)

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stylist

進藤郁子/資生堂

進藤郁子。資生堂トップヘアメイクアップアーティスト。横浜理容美容専門学校卒業。都内1店舗を経て、SABFA卒業後の2007年、資生堂入社。2023年からSABFAテクニカルディレクター。マジョリカ マジョルカのビューティーディレクターも務める。JHA大賞部門2013年グランプリ、2012年・2017年準グランプリ。

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