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10 Sep 2025
10 Sep 2025
beauty

【Magic Touch Vol.4】進藤郁子が教える、ヘア&メイクのさじ加減

好評連載中の「マジックタッチ」第4回のテーマは「緑」。「緑」と「和」を掛け合わせ、ふだんは主役になりづらい「翡翠」と「苔」をモチーフに選定。そこからどうメイクに落とし込んでいくのか、進藤さんの見事なアプローチ法をご紹介します!

穏やかに光る緑と静かに佇む緑

色から連想するディテールを言語化

「緑」から2つのイメージを固め、具体的なビジュアルをつくるための設計図を描く。

穏やかに光る緑

つややか系メイク
keyword:まろやかな質感。硬いツヤ。自然な色ムラ。

イメージ
日本の石「翡翠」が持つ人工的なツヤや透明感とは対極にあるクリーミーな質感を表現。


まぶたに緑の層をつくることで「翡翠」が持つ筋感や「和」の雰囲気を演出。

質感
まぶたにグロスをのせたり、ハイライトを入れたりしてつややかな質感に。

色味
ラメではなく、メタリックグリーンで鉱物っぽい光沢感を出し、ピンクを差し色に。

静かに佇む緑

マット系メイク
keyword:光の当たり方で見え方が異なる、心を落ち着かせる

イメージ
重厚な苔、若々しい苔、踏まれている苔…など違う顔を持つ「苔」をさまざまな緑で表現。


異なる緑の粉をそばかすのように散らすことで「苔」の小さな芽を演出。

質感
ベースはマットな質感にし、眉の存在感も消して「苔」の雰囲気を強調&「和」の世界観を引き出す。

色味
全体をベージュトーンにし、目元に複数の緑を置いて「苔」と地面や枯れた苔を表現する。

「緑」×「和」のモチーフで質感の違いを表現

今回は「緑」に「和」の要素を掛け合わせ、衣装に「和」のモチーフを忍ばせ、「和」の象徴とも言える「重ねる」イメージをメイクに取り入れました。緑は非常にメイク感が出やすい色なので、色そのものというより質感の違いやおもしろさを表現しています。
1つ目のイメージは「翡翠」です。翡翠はツヤ感がありますが、明るい緑だとフレッシュなツヤになり、透明度の高い宝石のようになってしまうので、深めの緑にグロスをプラスして鉱石の持つ硬いツヤを表現。自然が織りなす色ムラや皮膜感も表現しています。
2つ目の「苔」は屋久島に行った際にピンときたワードです。苔は光の当たり方によって重厚に見えたり、みずみずしい緑に見えたりするので、いろいろな緑を使いました。粉をそばかすのようにのせるとクリエイティブすぎない作品になります。
当初は南国の葉、サボテン、多肉植物などさまざまな緑を想像してみましたが、「和」を代表する緑とも言える「翡翠」と「苔」を選びました。みなさんも身のまわりにある素材で想像力をふくらませてみてください。

今回のモデルのBefore
色白で赤みがあるブルーベース。曲線が多い顔立ちで「洋」の雰囲気を持っている。

進藤流メイクのヒント

01 「緑」と「和」の融合

色を重ねることで「和」を表現
着物のように、色を重ねることで和の雰囲気を醸し出せないかと、「翡翠」ではまぶたに何層にも緑を重ね、「苔」では何色もの緑の粉を散りばめて表現しています。1色だけボンと緑を入れるとアクセサリーっぽくなり、「洋」の要素が強くなってしまいます。衣装にも“ちら見せ「和」”を取り入れ、メイクとの調和を取りました。

02 色の入れ方と質感に遊びをプラス

特徴を生かした質感とアクセントが鍵
「翡翠」はダイヤモンドのように透明感のある石とは違い、どこかちょっと野暮ったいような、まろみのある鉱石。ビー玉のような人工的なツヤ感と、重ね塗りしてつくる筋状の緑が奥行きを表しています。「苔」はマット感がポイント。粉をそばかすのように散りばめ、ドライな質感の中に複数の緑を点で描いて遊び心のあるメイクに。

03 モデル選び&モデルへの似合わせ

「洋」に「和」をあえて合わせる
「和」を表現するのに「和」っぽいモデルさんではまとまりすぎるので、今回はあえて「洋」の雰囲気を持っているモデルさんをチョイス。彼女に「和」を合わせることで、「和」に寄りすぎて説明的になることもありません。また彼女はブルーベースなので、「翡翠」メイクでは青みのあるピンクを差し色にしています。

process 穏やかに光る緑
異なるグリーンの層で翡翠の筋感を演出

1.グリーンの下地で気になる赤みを抑え、美容液配合のファンデーションを重ねる。スポンジに水を含ませて使用すると密着感が高まり、より素肌感のある仕上がりに。

2.アイホール全体にミントグリーンのシャドウをのせる。

3.2と同じ色をチップに取り、目の際にライン感を出しながら、色をぼかさずにのせる。

4.ピンクのチークをこめかみ~唇の横まで広い範囲に入れて、和の雰囲気を出す。

5.深緑のボディペイントカラーをアイホール全体に、アーモンドアイを描くように塗る。

6.5より少し明るめで、メタリック系グリーンのボディペイントカラーをアイホールの内側にラフに描く。

7.目頭に明るい蛍光グリーンのパウダーをのせる。異なるグリーンを重ね塗りすることで翡翠の原石や勾玉のような緑の層をつくり、筋感を出す。

8.目の下の真ん中に青みピンクのシャドウをのせる。

9.グロスをアイホールの中央にのせてツヤ感をプラスする。

10.目の下にハイライトをのせてつややかに仕上げる。チークが足りないと感じたらバランスを見てチークを足す。

11.リップクリームで唇を整えたあと、淡い青みピンクのリップを重ねる。

FINISH

process 静かに佇む緑
ベージュトーンのベースに“苔の小さな芽”をON

1.マット系の下地を使用し、サラッとした質感のベースをつくる。

2.コンシーラーで目の下や小鼻など、気になる部分をカバーする。

3.全体にブラシでパウダリーファンデーションをつけ、フォギーな肌に。マットな肌は厚塗りに見えやすいので、大きなブラシで薄くふんわりとつける。

4.スクリューブラシで眉色が濃く見える部分にコンシーラーを塗り、眉の存在感を消す。

5.ベージュ系のマットなアイシャドウを眉毛の下まで広範囲にぼかし広げる。

6.5と同じカラーを下まぶたにも重ねる。

7.まつ毛(上下とも)にもベージュのマスカラを塗り、顔全体をベージュトーンにしていく。

8.ベージュのチークをほほ中央にやや幅広にぼかす。

9.リップは明るめのベージュをチョイス。ベージュは苔のまわりにある地面や枯れた苔をイメージしている。

10.グリーン系のアクアカラー(水溶き)3色をミックスし、ブラシで弾くように目のまわりにつける。そばかすのように散らすのがコツ。

11.蛍光グリーンのアイシャドウを小さく砕いたものを茶こしに入れ、目頭を中心に上から振りかける。両目均一にしないほうがおしゃれに仕上がる。

FINISH

穏やかに光る緑

Make-up

・当初はもっと明るい緑を使ったが予想より蛍光グリーンが強くなったため、深緑に変更。
・まぶたは濃い色の前に薄い色を広げておくと奥行き感が出しやすい。
・ブルーベースの肌に合わせ、チークとリップには青みピンクをつける。

Hair

・当初はハーフアップにしてみたが、引き算をベースとしたヘアに変更。
・着物っぽい衣装に合うよう、後ろで1つ結びにして姫カットを生かす。
・帯揚げ風の布を結んで和テイストにし、全体の調和を図る。

静かに佇む緑

Make-up

・ベースはベージュトーンに整え、サラサラのマット肌にする。
・チークもマスカラもリップもベージュに統一。「苔」周辺の地面や枯れた苔を表現。
・複数の緑の粉をそばかすチックにランダムに散りばめ、マット感を強調。

Hair

・肌がドライな質感なので、ヘアはセミウェットな質感に。
・耳かけにし、おでこも出して顔をすっきり見せる。
・一束だけ前髪を垂らし、抜け感をプラスする。

photo:Matsuyama Yusuke(CHIYODA STUDIO)styling:Kawakami Maruri text:Morinaga Yasue

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stylist

進藤郁子/資生堂

進藤郁子。資生堂トップヘアメイクアップアーティスト。横浜理容美容専門学校卒業。都内1店舗を経て、SABFA卒業後の2007年、資生堂入社。2023年からSABFAテクニカルディレクター。マジョリカ マジョルカのビューティーディレクターも務める。JHA大賞部門2013年グランプリ、2012年・2017年準グランプリ。

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