表参道のサロン勤務時代は雑誌撮影やセミナー講師として引っ張りだこだった二階堂 雪さん。しかし、ハードワークの日々は卒業。独立して、プライベートサロン『シイ』オーナーとなった今、のんびり顧客と向き合い、思うことは?
美容師になろうと思った時期ときっかけは?
コンプレックスだったクセ毛を好きになれた職業だから
クセ毛がひどくて、小さな頃からそれがコンプレックスだったんです。思うようなスタイルに仕上がらなくて、すごく自分の髪が嫌いだったんですよ。そんなとき、地元・群馬の美容室で東京帰りの美容師さんが、「クセ毛は生かせるんだよ」と教えてくれて。私にとって目からウロコのような話しだったんです。その方に切ってもらうようになってから、「ステキなクセだね」って、髪をほめられるように。もう、私にとってそれは人生が一変するような出来事だったんです。
それから、私が悩みを払拭したように、誰かの悩みを解決して、背中を押してあげられるような美容師になりたいと思うようになったのです。その美容室でアルバイトをしながら美容学校に通い、卒業してから、東京に出てきました。その後、内定辞退するなどいろいろあったんですけどね(笑)。
美容師になって大変だったことは?
振り返ると、デビューまでの9年間が大変でした
私、デビューまで9年かかったんです。不器用で何事にも時間がかかるほうだから、当時はそんなものだろうと思っていましたが、今思えば、デビューまでの期間が大変でしたね。私はアシスタント業が好きだったので、一生アシスタントでもいいと思っていたくらいだったんですよ。だから、デビュ-できないことに悩んだりすることはありませんでした。それに、当時、私がついていたスタイリストさんがとっても多忙な方だったので、しょっちゅう撮影やセミナーの準備に追われていましたから、それはそれで充実していたんですよ。
でも、デビューして、お客さまにヘアを任せてもらうようになると、やっぱり楽しいんですよ。アシスタントのままでいいとか、毎日が忙しいから練習できないとか、言い訳だったんだなと、その後、気づくことができました。
美容師になって楽しい!&よかったことは?
お客さまと関われる、この仕事のすべてが好きです
いつも思うんですが、美容師の仕事って、仕事のようで仕事じゃないような気がするんです。自分の技術を喜んでくれるのはもちろん、いろんな人に出会い、いろんな話を聞かせてもらい、お客さまの人生に寄り添うことができるなんて、こんなステキな仕事、ほかにありませんよね。とはいえ、デビューして3年くらいは、接客のことで悩むことが多かったんですよね。いつも後で、「ああすればよかった」「こうすればよかった」と悔やんでばかり。でも、お客さまとのやりとりのなかで、お客さまを理解すること、きちんと言葉で説明することで信頼関係を築くことができるのだと気づき、徐々にお客さまに支持され、自信をもてるようになりました。
技術は最低限のことができればいいと思いますし、9年、みっちり修業させてもらってますからね。
独立した今の様子を教えてください
忙しすぎた表参道時代、穏やかに時間が過ぎる今
一昨年、独立し、東京・田園調布にプライベートサロン『シイ』をオープン。今年で2年目になります。田園調布という土地に縁もゆかりもなかったのですが、たまたますごくいい物件に出会えて、サロンを立ち上げることに。よく知られる高級住宅街だけあって、平日の昼間は人通りもまばらで、時間が穏やかに過ぎていく、そんな場所です。
オープンから半年ほどは忙しく、それが徐々に落ちつき、今やっと自分のペースをつかむことができました。今まではアシスタントに助けてもらうことも多く、マンツーマン接客となって、どれくらいのペースが妥当かわかりませんでしたからね。新規集客はしておらず、表参道時代の顧客の方々に支えてもらっているのは本当にありがたい話。前職ではずっと忙しかったから、今の穏やかな生活がうそのようですけど(笑)。
今後の目標はありますか?
自分で考え、ひとりで動く。〝今〟こそ挑戦の真っ只中
独立するつもりはなかったんです。忙しかったけれど、それはそれで楽しかったから。ただ、組織に所属していれば、やらなければならないことをやっていればいいだけだから、自分で物事を考えることができなくなっていたんです。簡単な言葉でいえば、その環境はとても安定していたんです。それって、成長が止まったとも言えるんですよね。成長することを止めたら、ゆっくり衰退するだけ。
40歳を目前にいろいろ考えました。前の職場にいたままでも成長はできたでしょう。でも、その環境にいると、私は人に合わせるのが得意なので、自分をごまかしながら甘えてしまうと思ったんです。だから、意を決して飛び出すことに。私にとっては今が挑戦中。次の目標という明確なものはありませんが、成長し続けるために何ができるかを考え続けています。
Work -二階堂 雪さんのヘア作品-

二階堂さんが美容師になるきっかけにもなったクセ毛を生かすヘアスタイルはもちろん、エアリーな質感、抜け感のあるモードなスタイルも得意のレザーカットで生み出される。
こだわりのWORK ITEM

好きなことに時間を使うことは、仕事に還元される
アートや建築が好きな二階堂さん。「なかでも、スイスの建築家、ピーター・ズントーが好き。好きなことを楽しんでいれば、仕事にいい影響として帰ってきますよね」

香りで体調を管理し、未病をケアする
「何となく不調」という未病が増えたため、ケアするためにスクールでアロマを学んだことも。「よい香りはリラックス効果があるうえ、肩こりにも効果的なんです」

髪だけでなくボディにも使えるお気に入り2種
華やかな香りと少量でしっとりするヘアオイル、「オルキデのグロス」と、森のような香りで癒される、重すぎず使いやすい、「リリオのバーム」がサロンワークの必需品。
photo:Yasuda Yuri text:PREPPY