「マジックタッチ」第5回のテーマは「黒」。黒は祝いの席で華やかさを演出したり、逆に存在感を消したり、見え方に幅がある色。そんな「黒」という色に何をプラスしてどんな世界観を表現するのか。進藤さんの頭の中を紐解きます。
哀愁漂う黒と沈黙する黒
色から連想するディテールを言語化
「黒」から2つのイメージを固め、具体的なビジュアルをつくるための設計図を描く。
哀愁漂う黒

つややか系メイク
keyword:メタリック、敗北感。
イメージ
戦いの末に敗北するダークヒーロー。クールでカッコいいだけではなくどこかに悲壮感を感じさせる。
形
目のまわりに象徴的なラインを引き、マスクっぽい雰囲気を演出。
質感
テカテカの衣装に合わせて、ツヤ肌に。ラインもすべて塗りつぶさず、少し肌が透けるように。
色味
黒にシルバーとメタリックブルーをプラスして、スポーティ&ファッション性を感じるメイクに。
沈黙する黒

マット系メイク
keyword:喪服、コラージュ、涙、落ち着き
イメージ
コラージュ作家・岡上淑子さんの持つ世界観に着想を得て、喪服にコラージュ要素を取り入れ、アンティーク調に。
形
大胆なつけまつ毛で「外している感じ」を表現。喪服にきらめきはNGなので、メイクでラメを使う。
質感
ベースはファンデーションを薄付きにしたマット肌。リップもマット系カラーを選択。
色味
モーブ系グレーのアイシャドウや、紫とグレーを混ぜたアイシャドウで黒を効果的にぼかす。

「黒」の持つイメージを真逆にとらえる
「黒」は日常で洋服やメイクに取り入れやすい色。今回はいかに「黒」の現実感をなくすか? を起点に考えてみました。「黒」にはカッコいいイメージがありますが、それをモードっぽく表現するのではなく、ちょっとふざけた感じにしてみようと考えたのがひとつ目の「ダークヒーロー」です。ダークヒーローというのは、結局のところ戦いに負けるのが常で、どこか哀愁の漂う存在。メタリックカラーや象徴的なラインを描きつつも、抜け感のある肌にしたり髪をラフにつくったりすることで敗北感や戦いの後の余韻を持たせ、単なるコスプレにならないように気をつけました。
ふたつ目のテーマは「喪服」。喪服に、大好きなコラージュ作家・岡上淑子さんのコラージュの世界観を組み合わせることで、ちょっとシュールでおどろおどろしい、少し怖い感じでありながら、シックで品がある女性像を表現しました。
カッコよくなるものをくずす、甘くなるものをくずす。どちらも本来、「黒」が持っているイメージを真逆にしたのが今回の2作品です。
今回のモデルのBefore
水分と皮脂のバランスがよい普通肌で、ややイエベ寄り。ナチュラルな雰囲気を持っている。

進藤流メイクのヒント
01 引き締まる黒をあえて曖昧に表現
定番アイテムで違和感を描く
黒は日常でもコンテストでも、ヘアやメイク、洋服において強くてわかりやすい色です。また、引き締まる色ではあるのですが、それを今回は曖昧に見せることをポイントに置きました。黒のアイライナーやマスカラなど当たり前のアイテムを使いつつも、描き方や描く場所に工夫を凝らして誇張し、違和感を出して少し不思議な感じにしています。
02 黒に何をプラスするかで印象を変える
トレンド感も入れて世界観をつくる
黒はパーティやフォーマルな場所にふさわしい色でもあり、喪服や黒子のように控えめな佇まいを表す色でもあります。黒は何をプラスするかで大きく印象が変わる色。「ダークヒーロー」ではメタリックブルーを、「喪服&コラージュ」ではラメをプラスして、黒の持つイメージに変化をつけながらトレンド感も取り入れました。
03 「どこかで見たメイク」にならないモデル選び
ファッション性を高め、品格を保つモデルに
クールでカッコいいモデルさんに黒を合わせると、「どこかで見たことがある」メイクになってしまいます。そこで、ふだんからナチュラルな思考を持っていて、顔立ちも和美人なモデルさんを選択。「ダークヒーロー」をファッションっぽく見せ、「喪服」で誇張したまつ毛を付けても品がある、そんなモデルさんが最適だと考えました。
process 哀愁漂う黒
メタリックカラーでスポーティな雰囲気に

1.美容成分入りのクッションファンデーションを、薄く全体に付け、ツヤのあるナチュラルな肌をつくる
2.コンシーラーで気になるところをカバーする。
3.ブラックのペンシルアイライナーで目のまわりにラインを引く。フリーハンドで描くことで手書きっぽさを生かす。

4.乳液をつけた細い綿棒でアイライナーのラインがにじんでいる部分をオフ。ラインの縁をしっかり出す。
5.グレーの細いリキッドアイライナーでブラックのラインと平行なラインを引く。
6.ブラックとグレーの間をシルバーのアクアカラーで埋めていく。

7.シルバーを付けなかった部分に、メタリックブルーのアクアカラーをバランスを見ながら付ける。
8.ブラックのライン上にブラックのリキッドアイライナーを重ね描きし、ラインをより強調させる(写真左は強調後、写真右は強調前)。
9.青紫系カラーのリップを唇全体に付ける。

10.ダークブラウンのリップカラーをブラシでトントンと付け、なじませる。重ね付けすることで色の深みが増し、にじみ出るようなくすみ感が出る。
11.ツヤ系の衣装に合うよう、ほおの高い位置にハイライトを付けてツヤを出す。

FINISH
process 沈黙する黒
「くまメイク」&「スマッジアイ」で悲しみを描く

1.下地を顔の中央にのみ、ブラシでぼかすようにつけることで、肌色をワントーン上げて端正なマット肌に。
2.パウダリーファンデーションをブラシで顔全体に付ける。なるべく薄くミルフィーユのように付けると、厚塗りにならない。
3.モーブ系グレーのクリームアイシャドウをアイホール全体に付ける。

4.黒目の下〜目頭に紫とグレーを混ぜたアイシャドウを付け、赤みを際立たせる。何日か寝不足が続いたような「くま」っぽく見せる。
5.まつ毛のキワにブラックの細いアイライナーを引く。
6.ブラックのアイシャドウをアイライナーの下にぼかす。涙でにじんだような雰囲気を醸し出す。

7.マスカラ下地を目の下側に付け、さらに束感の出るマスカラを重ね塗り。
8.長く加工したつけまつ毛をピンセットで付ける。
9.ラメ、ホログラム、ラインストーンを、つけまつ毛と肌に付ける。

10.グレーのリキッドアイブローで眉のすき間を埋める。そばかすのように散らすのがコツ。
11.マット系ベージュのリップを、しっかり唇の輪郭を縁取りながら付ける。

FINISH
哀愁漂う黒

Make-up
・目のまわりのラインは、手書きっぽさを残すのがポイント。
・シルバーとメタリックブルーをプラスしてスポーティな雰囲気に。
・リップは青紫系カラーにダークブラウンを重ね付けして、自然なくすみ感を出す。
Hair
・髪を一束にまとめると印象が強くなりすぎるので、ラフなダウンスタイルに。
・衣装のビニール感(ツヤ感)に合わせてツヤっぽく仕上げる。
・根元にベース剤をつけて立ち上がりを付け、オイルワックスを全体に付ける。

沈黙する黒

ボウタイブラウス¥27,500 スカート¥33,000 ヘッドドレス¥55,000 コサージュ各¥15,400(以上、すべてHiraoka MILLINERY)
Make-up
・「静か」「寂しい」という印象を表現するため、端正なマット肌に。
・赤みを際立たせた「くまメイク」で血管を表現し、寝不足な雰囲気を演出。
・ブラックのアイシャドウをぼかした「スマッジアイ」で、涙でにじんだような雰囲気に。
Hair
・マット系メイクに合わせ、ヘアもドライな質感に。
・前髪は垂れているつけまつ毛の延長に見えるよう、ほどよく毛束を下ろす。
・髪の見え方を計算してヘッドアクセをバランスよく付ける。

photo:Matsuyama Yusuke(CHIYODA STUDIO) styling:Kawakami Maruri text:Morinaga Yasue
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