PREPPY

1 Nov 2025
1 Nov 2025
beauty
           

【Magic Touch Vol.6】進藤郁子が教える、ヘア&メイクのさじ加減

「マジックタッチ」最終回のテーマは「白」。ピュアな白、白塗りの白、コスチュームの白など、さまざまな白がありますが、進藤さんはどんな白を描いたのでしょうか。メイクにどう白を落とし込んだのか、その世界観とプロセスは必見です!

幻想の白と無垢な白

色から連想するディテールを言語化

「白」から2つのイメージを固め、具体的なビジュアルをつくるための設計図を描く。

幻想の白

モード系メイク
keyword:シュール、人工的

イメージ
アレキサンダー・マックイーンにインスピレーションを得て、舞台後の虚無感あるピエロをイメージ。


鼻の頭が丸くて赤いのをそのまま表現するのではなく、まぶたに丸を描いてピエロっぽいクラフト感を表現。眉も跳ね上げて人工的な線をつくる。

質感
ツヤ肌にするとスポーティでフレッシュに寄ってしまうので、マットに仕上げて重さのある白を演出。

色味
肌は赤みを消して白く整え、メタリックカラーやシェードカラーをアクセントに。

無垢な白

ピュア系メイク
keyword:雪、氷、銀世界、白樺

イメージ
写真家・横浪 修氏が描く銀世界を軸に、白の持つピュアさ(哀愁・おぼこさ・垢抜けない感じなど)と透明感を表現。


雪や氷を連想させる8種類のパーツをバランスよく付け、メイクの美しさを演出。

質感
セミマットな質感に、雪焼けっぽい感じを組み合わせて冬を想起させるメイクに。

色味
オレンジ系のコンシーラーで眉を消し、アイシーなメタリックカラーをポイントでON。

冬のセミマット肌に鍵となる要素を添える

最終回のテーマは「白」。肌を白くしたいと思い、最初は白衣や和装を連想しましたが、ちょっとおもしろくてシュールな感じがいいかなと思い、アレキサンダー・マックイーン氏の世界観をオマージュしたピエロをつくることに。モデルのもつかわいらしさと個性を生かしつつ、ステージが終わった後の虚無感を表現しています。
もうひとつは白樺や雪をイメージし、白の描く雪の世界を表現。横浪修氏の写真は極寒の冬景色の中に高校生が走っている哀愁とおぼこさを映し出しており、それをうまくメイクに落とし込めないかと考えました。
今回は12月号ということを意識し、2作品とも肌は軽さのある白ではなく重さのある白をつくり、セミマットで冬っぽい感じのベースにしています。そこにピエロには人工的な形と色を、白樺と雪には雪焼けや氷を添えています。
6回連載では、ナチュラルビューティのハウトゥーを詳しく解説するより、いろいろなツールや手法で楽しんでいただくことを裏テーマに置きました。私の「秘伝のタレ」のつくり方が満載ですので、ぜひ全回、振り返ってください。

今回のモデルのBefore
幼い印象があり、ピュアな雰囲気をもっている。甘さがありつつも太い眉など個性が際立っている。

進藤流メイクのヒント

01 どう変化させたらおもしろいか? それをベースに考える

直接的ではないメイクを施す
ピエロ=鼻の頭が赤い、顔全体が白い、雪景色=冷たい、澄んだ空気、という定番のイメージをそのままメイクに取り込むのではなく、シュールでおしゃれなピエロ、おぼこさとピュアさを感じる雪、をメイクに落とし込みました。どうやっておもしろくできるか? を念頭にモデルや衣装とのバランスを考えながらメイクすることが大事です。

02 トレンド感に少しの違和感をプラス

普段顔にならないような工夫を
肌をワントーン明るくするのはよくある手法だと思いますが、今回はそれを誇張したり、部分的により明るくしたりしてちょっと違和感が生まれるようにしています。プラスするパーツもラインストーンなどよく使われている素材ではなくオリジナルのパーツやなかなか使わないパーツを付けて、街を歩いている人の顔にならないよう心がけました。

03 モデルの個性と衣装に負けないメイクに

つくり込んだメイクにフォーカス
人工的なピエロっぽいメイクでもどこかにファッション感が残る、直接的に雪を連想させるパーツを付けてもリアルになりすぎない、そんなモデルを探しました。衣装もボリュームがある感じだったので、メイクをナチュラルにすると衣装とモデルの個性とおしゃれ感にメイクが負けてしまうと思い、2作品ともつくり込んでみました。

process 幻想の白
人工的な形やコケティッシュな雰囲気を演出

1.水色の下地を全体に塗り、肌の透明感を出す。

2.目や小鼻のまわりなど、赤みを感じる部分に明るめのファンデーションを付けて赤みをカバー。

3.白いファンデーションを乳液で薄め、ブラシで顔にぼかし広げる。全体を均一にていねいに明るくする。

4.さらに白くしたい部分(主に顔の中央)には、白のボディペイントを重ね付け。

5.白のボディペイントを、ほお・目尻・額にも付ける。顔の中心から端に向かって、外側に向かって薄くぼかし広げるのがポイント。逆サイドも同様。

6.ゴールドのメタリックシャドウをまぶたの中央に丸く描く。同じ色を目のキワの中央にも付ける。

7.眉毛に透明の眉マスカラを付け、指で押さえながら眉毛を上に跳ね上げる。

8.つけまつ毛の糊で眉毛にパーツを付ける。

9.ブラウンのリップを唇の中央に付ける。

10.鼻の頭とほおにシェードを薄く付け、ピエロの雰囲気を醸し出す。

11.鼻にアクセサリーを付ける。

FINISH

process 無垢な白
寒くて冷たい冬景色にピュアさをプラス

1.眉毛を水を含ませたコットンでしっかり拭き、脂分を取り除く

2.つけまつ毛の糊を眉毛に付け、毛を寝かせて立ち上がりをつぶして平らにする

3.つけまつ毛の糊をハンディファンで乾かす。濡れたままだとつぶした眉毛が浮いてしまうので、よく乾かすのがポイント。

4.オレンジ系のコンシーラーを眉全体に塗り、眉毛の存在感を消す。一般的なベージュ系のコンシーラーだとグレーっぽさが残ってしまうのでオレンジ系がベスト。

5.肌色に近い色のコンシーラーを眉毛に重ね付け。肌になじむようにぼかし、眉を完全に消す。

6.空の(何も付けていない)ブラシで4と5の境目をぼかし、肌になじませる。

7.ファンデーションを全体に塗る。

8.目頭と鼻の付け根にメタリックカラーのアイシャドウを付ける。

9.雪を表すパーツを付ける。※パーツはコットンを裂いて白いパウダー(シャドウ)をまぶした、進藤さんオリジナルのもの。

10.赤と茶色を混ぜたチークをほおとあごにほんのりとのせる。冬の寒さで顔が少し赤くなっている感じや、雪焼けした感じを演出。

11.白のアクアカラーをブラシで弾いて飛ばし、ビーズなど8種類の白い装飾パーツを肌やまつ毛に付けて雪と氷を表現する

FINISH

幻想の白

PREPPY2025.12月号/ 048ページ

Make-up

・ベースは赤みを消して白く整え、透明感を際立たせる。
・眉毛を跳ね上げてパーツを付け、人工的なラインを生み出す。
・まぶたに丸く色を入れ、
鼻の頭とほおにシェードをのせてコケティッシュに。

Hair

・全体にオイルとバームを混ぜたものをなじませ、
バックの低い位置でひと束に結ぶ。
・前から見たときにサイドの髪が少し見えるくらいにたわませる。
・前髪はつくらず、おでこはしっかり出して帽子をかぶせる。

PREPPY2025.12月号/ 049ページ
ジャケット¥18,700、レースえりブラウス¥17,600、腰に巻いたエプロン¥4,950(以上、すべてOTOE) 帽子¥36,300(Hiraoka MILLINERY)

無垢な白

PREPPY2025.12月号/ 050ページ
柄ブルゾン¥13,200、ブーツ¥14,300(共にOTOE) オールインワン¥52,800(TORO) 帽子¥18,700(Hiraoka MILLINERY)

Make-up

・オレンジ系のコンシーラーで眉毛の存在を完全に消す。
・赤と茶色のチークで日焼けや雪焼けを表現。
・白い装飾パーツと白のアクアカラーを肌やまつ毛に付け、雪や氷を演出。

Hair

・ダウンジャケットにかからないよう、バックでひと束にまとめる。
・前髪は風に吹かれているようにセットし、屋外の雰囲気を出す。
・顔まわりはすっきりとさせ、ボーイッシュな感じに。

PREPPY2025.12月号/ 051ページ

photo:Matsuyama Yusuke(CHIYODA STUDIO) styling:Kawakami Maruri text:Morinaga Yasue

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Hair&make-up artist

進藤郁子/資生堂

進藤郁子。資生堂トップヘアメイクアップアーティスト。横浜理容美容専門学校卒業。都内1店舗を経て、SABFA卒業後の2007年、資生堂入社。2025年10月よりSABFA校長に就任。マジョリカ マジョルカのビューティーディレクターも務める。JHA大賞部門2013年グランプリ、2012年・2017年準グランプリ。

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