同じテーマに挑み、同じ条件で作品をつくる。
しかし、生まれるデザインは決して同じではない。
毛束の重なり、質感のつくり方、アウトラインのわずかな差。
それは、スタイリストたちがこだわり抜く"1㎜"の世界。
本企画では、そんな完成度を左右するミクロの差をマクロで解剖。
シーンを牽引する4組8名が"1㎜"に込めた想いを技術と対談でぶつけ合う。
自由で大胆なカットで
たどり着いた抜け感と品格
パッと見て伝わるこの極まった毛束のバランスをじっくり見てほしい。自信と経験が可能にする、深く入れたチョップカットが生み出す、品格と大胆さが共存する唯一無二のスタイルデザイン。これぞ世界のモードが希求する東京のストリートのバランスだ。
Yamashoji Yuki / KATETAYLOR
model: Hara Riku



1mm DETAIL
深く切り込んだチョップカットが生んだこの毛束のバランス。
斜め45度。4〜5㎝の深さ。
山庄司祐希の経験と自信がたどり着いたチョップはうかつにマネできない領域にまで達している。


How To
CUT/ハチ下はしぼるラインでカット。前から見たときにサイドにカドが出るよう構成するが、フロントバックはカドを出さない。オーバーにチョップカットを斜め45度、4〜5㎝の深さで入れる。
STYLING/アンダーはグリースでタイトに収めて、もみあげの上を横に出す。オーバーはマットワックスを使ってつまんで出して完成。
極短のフロントが生んだ
「フレッシュなクラシック」
これまでの宮本クラシックスタイルを踏襲したサイドからバックの丸い収まり。そこに組み合わされるのがこれまで見たことがないくらい切り込まれたフロントのカットだ。古くて新しいこのニュー宮本スタイルが、クラシック表現の可能性を大きく切り拓いた。
Miyamoto Shunsuke / MR.BROTHERS CUT CLUB HARAJUKU 2nd
model: Murakami Shuhei



1mm DETAIL
クラシックスタイルの前髪を2〜3㎝まで切り込んで、急角度でトップにつなげる。
実際に目にするまでは事故の予感しかしないくらい大胆な発想だろう。
宮本隼輔の確信と探求心に拍手。


How To
CUT/一周テーパーフェード。GPからバックの丸みに落ちる毛をガイドにしたら、次に前髪を3㎝に短くカット。フロントからGPまで急角度につなげる。フロントの短く切った部分には粗めにブレンディングを入れる。
STYLING/クレイファイバーポマードでサイドパートにまとめる。フロントを適度に動かしながらくずして完成。
KATETAYLOR 山庄司祐希
「『品とモード』を表現するために理論で構築した結果の1㎜ですね」
MR.BROTHERS CUT CLUB 原宿2nd 宮本隼輔
「自分の髪で実験したら誰も見たことのないスタイルが完成しました」


「ハサミを深く入れる表現に行き着きました」(山庄司)
山庄司祐希(以下、山庄司):
僕の今回のディテールは「あえてザクザクに切る」ということです。アウトラインをきれいに見せつつ、3〜4㎝ほどのかなり深い斜め45度のチョップカットを入れて、あえて極端な段差をつけているんです。
宮本隼輔(以下、宮本):
それって最初は怖いですよね。
山庄司:
この深さはスタイリングをして動きを引き出したときに、きれいなフォルムで独自の抜け感が生まれるように計算しています。これまでの僕はきれいにつなげて切り、そこにセニングを入れるのがセオリーでした。でも、たとえば1㎝程度のチョップカットではどうしても狙った抜け感が生まれなかった。だからこそ、怖がらずにハサミを深く入れる表現に行き着きました。僕のカットの軸には「品とモード」があり、それを表現するために理論的に構築した結果の「1㎜」ですね。
宮本:
今の話を聞くだけでも圧倒されますね。僕の場合は、今回の作品でこれまでの自分を一度再構築しようと考えました。実は今年に入ってから数カ月間、新しいデザインがまったく降りてこなくて。この撮影もそのままでは受けられなかった(笑)。そこでまずは自分の髪を自分で大胆に切って模索しました。
山庄司:
具体的にはどの部分を引き算したのか気になります。
宮本:
テーパーフェードの毛流れや、長めのレングスといった自分の武器は残したい。そうなったときに「よし、前髪を思い切り切り込んでみよう」と思い至った。自分のなかのタブーに挑戦したんです。
「山庄司さんの作品を見て、背景の大切さを知った」(宮本)
山庄司:
宮本さんの作品を見ると、いつも僕はとにかくえり足の処理、あのすばらしい刈上げの技術に目を奪われます。今日も後ろのラインがまっすぐに切られているのですが、それが驚くほどかっこいい。たとえば1年目のアシスタントが産毛の処理を誤ったときのまっすぐになりすぎたえり足のラインってあるじゃないですか(笑)。どうしてこうも異なるのか。
宮本:
ありがとうございます。そこには僕なりの「ネープ理論」があります。骨格として、欧米の方はえり足の幅が狭く、逆にアジア人は深くて広がって見えやすい特徴があります。このバランスをコントロールして収めることでフォルムが決まるんです。今回も、一度テーパーフェードを入れてから、徐々にラインを際立たせています。
山庄司:
なるほど。肌に乗っかる「キワ」が上手な人こそ、本当にカットがうまいと僕は思っているので、まさにそのこだわりが伝わってきました。
宮本:
そう言っていただけて光栄です! 僕が山庄司さんの作品で強く惹かれたのは、写真のトータルデザインに対する圧倒的な表現力なんです。たとえば白壁の前でシンプルに髪だけを撮るのではなく、背景や小道具を含めた1枚の写真として独自の空気感を完成させている。トータルの調和で表現する感性が素晴らしいですよね。
山庄司:
僕は感覚だけで作れる天才肌ではないので、「なぜこれが必要なのか」という理論を自分のなかで立てていかないと理想に行き着けないんです。
宮本:
その徹底した理論があるからこそ、あの表現が生まれるんですね。山庄司さんの刺激的な作品を見たからこそ、僕自身も背景や全体の空気感に対して、これまで以上に強いこだわりをもつようになりました。
「今日の宮本さんの作品に衝撃を受けました」(山庄司)
宮本:
僕は今、誰も見たことがないような「ベリーショート」で攻めたいと考えています。短いスタイルは表情をつけるのが本当に難しいのですが、自分の殻を破り、引き算と掛け算を繰り返すことで、遊び心のある新しいバーバースタイルを確立したい。今回の作品はその大きな突破口になりました。
山庄司:
今日、宮本さんのモデルさんのベースカットを見たとき、その攻めた姿勢に僕も圧倒されたし、刺激を受けました。僕が追求し続けているのは、先ほども触れた「きれいなものをどうくずすか」という一点です。毎年、過去の自分が作った型を解き放つための挑戦を繰り返しています。
宮本:
アプローチは違えど、現状に満足せず殻を破ろうとしている部分は共通していますよね。作品づくりは、そのときの自分のマインドを年輪のように記録していく大切な行為です。この文化をもっと僕の畑にも浸透させていきたいですね。
山庄司:
まさに美容とバーバーの枠を超えた、素晴らしいクロスオーバーになりましたね。宮本さんと対峙することで僕自身も本当にワクワクしたし、多くの学びを得ました。
宮本:
こちらこそ、最高の機会をありがとうございました。この刺激を糧に、これからも誰も見たことのない次の1㎜を追い求めていきましょう!
photo: Matsuyama Yusuke(chiyoda-studio) text: Men's PREPPY
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STYLIST
KATETAYLOR 山庄司祐希
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MR.BROTHERS CUT CLUB 原宿2nd 宮本隼輔