DaBに気になるスタイリストがいる。最初にそう思ったのはコンテストの現場でのことだった。米島優。その名前と長身をすぐに記憶に刻んだ。その後の作品やサロンワークの発信を追いかけているうちに、譲れない美学と、モデルやお客さまへの深い思いやり。その二つが均衡するスタイルから、いつしか目が離せなくなっていた。
photo: Umetsu Shota make: Sakuma Ayaka, Notoya Mei(DaB) text: PREPPY







Interview

Profile
米島 優
よねじまゆう。『ダブ』スタイリスト。福岡美容専門学校北九州校卒業。会社員から転身して美容師の道を志した経歴を持つ。コンテストや作品撮影をはじめとして、その強さと繊細さが共存したデザインが高い評価を受けている。
「クリエイションに挑戦してみよう」と、
誰かが一歩を踏み出すきっかけになりたい。
自分のためにデザインするのではなく、誰かのきっかけになりたい
――PREPPYで初の表紙巻頭撮影、お疲れさまでした。今回、作品のテーマとしてかかげた「NAKED(ネイキッド)」に決まるまで、かなり悩まれたとお聞きしました。
「いろいろと表現したい、伝えたいことがありすぎて本当に悩みました。自由なお題を任されたとき、自分は何のためにデザインをして、何のためにクリエイションをするのかを改めて突き詰めて考えたんです。僕にとっての目的はひとつしかなくて、このデザインが見た人の心に刺さり、クリエイシ ョンを始めたり、デザインの世界に挑戦したりする、その一歩を後押しすることでした。自分のためにデザインするのではなく、誰かのきっかけになりたい。そのメッセージをどう表現するかを考え抜いた結果、等身大の自分を見せる『NAKED(ネイキッド)』という言葉に行き着きました」
――これまでの作品づくりとはアプローチを変えたのですね。
「これまでのコンテストや作品づくりでは、要素を足して足して、枠いっぱいにデザインを詰め込むことが多かったんです。見せ方や仕掛けを含めてプラスしていくことが好きでした。今回の単独表紙は、そのやり方をいったん手放す大きな節目。ひとりのヘアデザイナーとして純粋な実力を見せられる場にしたいと考えました。だからこそ、ファッションなどの要素を極力なくし、ヘアとメイク、モデル本人の素材だけでどれだけ引っ張って表現できるかという挑戦を選びました。僕は決して天才でも秀才でもなく、器用な人間でもありません。背伸びして大きく見せるのではなく、等身大の自分が今いいと思うもの、そしてこれまで見て頭の中に残ってきたいいものの集大成にしたいと考えました」
――今回の撮影モデルたちへの向き合い方にも、テーマが色濃く反映されています。
「モデルが持つチャームポイントを、そのままデザインに生かしたいと考えました。そばかすやクセ毛をレタッチで消すのではなく、その人らしさとして受け止め、魅力として引き出していく。 個性を引き立てながら、見て素直に『おしゃれだな』と感じられるバランスやシルエットをとことん追求しました」
行動して分析し、引き出しを増やし続ける
――一度社会人を経験してから美容師になられたそうですね。自身にとって大きな転機となった出来事は何ですか?
「高校時代まではスポーツばかりで、自分がハサミを持つなんてまったく考えていませんでした(笑)。会社員になってから自分の将来を見つめ直す中で、身近にあった美容師という仕事に改めて目を向け、父の仕事を見に行ったんです。2〜3時間でお客さまから直接『ありがとう』と言われ、ゼロから100まで完結する仕事の素晴らしさに感動してこの道を選びました。『ダブ』に入ってからの大きな転機は、アシスタント時代に一度本気で辞めようとしたときです。代表の八木岡(聡)に相談したら『ここで諦めてどうする。この仕事でやっていこうと決めて、ハサミを持ったんじゃないのか。何者にもならずに辞めたら、この先も本気で頑張りきれないよ』と強く背中を押されて、自分の心に火がつきました。それと、常に前を走る先輩であるHARUTOや私市(龍星)の存在も大きいです。昨年その2人も担当したプレッピーの表紙と巻頭特集はずっと目指してきた憧れの舞台でした」
――デザインに行き詰まったときは、どのようにして乗り越えてきたのでしょうか。
「とにかく行動することです。モヤモヤするときって、手を動かさずに頭だけで考えているときなんですよね。だからウィッグを切ったり、人が作ったいいデザインを徹底的に完コピします。夕暮れの空を見て、突然デザインがひらめくようなタイプではありません。だからこそ、先輩方が作った素晴らしいデザインをウィッグでまったく同じように再現して、ブリーチの配合からカットのバランスまで徹底的に分析します。そうやって構造を理解して、自分のものにしていく。手を動かして行動して分析し、引き出しを増やし続けることが僕の原点です」
泥臭い継続こそが僕の強みです
――米島さんの美容師としてのコア、アイデンティティを一言で表すと何でしょうか?
「とんでもない『負けず嫌い』です。これだけは誰にも負けない自信があります。僕を突き動かすエンジンは、憧れのようなポジティブな感情よりも、まわりに対する悔しさや嫉妬といったネガティブな感情のほうが強いんです。あいつを超えてやりたいという悔しさは、最後の最後まで走り続けられる大きなエネルギーになります。じゃんけんひとつ負けるだけでも本気で悔しいくらいです。何をやっても普通だった僕が、才能やセンスのある人に勝つ方法は、決めたことを絶対に諦めずに続けることしかありません。まわりが諦めていく中でも、最後まで絶対に諦めない。その泥臭い継続こそが僕の強みです」
――最後に、これから『ダブ』の米島優として、どのような未来やデザインを描いていきたいかをお聞きしたいです。
「僕の人生のテーマは『自分が死ぬまでに、何人の記憶に残る人間になれるか』です。手の届かないようなスターがかっこよく誰かを励ますという時代ではないと思うんです。泥臭くもがいた過程は、削ぎ落とされて作品に残る。限界まで突き詰めた表現が誰かの心に引っかかって、『自分もクリエイションに挑戦してみよう』と一歩を踏み出すきっかけになれたら何よりもうれしい。誰かの記憶に残るデザインを、これからも届けていきたいです。そしていつか、僕を見てクリエイションを始めた人が僕をはるかに超えて素晴らしい作品を作って活躍していく。そんな未来を願っています。もちろん、そうなったらまた負 けず嫌いを発揮してしまうと思いますネ、キット」



右:くせ毛のウェーブを生かし、頭が大きく見えないようミニマムに切り込み、毛先を外してアウトフォルムに違和感をプラス。トップの潰れを防ぐためカラーのグラデーションで奥行きを出した。
中央:骨格に対してどうフォルムをコントロールするかがデザインのカギ。質感とバランス、ラインの位置の計算で顔形にフィットさせている。左:自然乾燥のウェーブ髪質に合わせ、肌になじむ黄みを残したブロンドに設定。パヤパヤした毛を抑えて柔らかく整え、骨格にフィットする顔まわりのインデザインとカラー配置で自然な美しさを引き出した。
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