名古屋を拠点に、独自の世界観で全国の美容師たちを惹きつけてきた『in chelsea』。創業15周年を迎えたこの秋、ヘアショー「棘(とげ)」が開催された。周年行事を越えて、照屋寛倖氏率いるチーム『in chelsea』の美学に包まれた一夜をレポートする。

in chelsea(インチェルシー)のヘアショー「棘」が
残したものとは何か。
小劇場を埋めた絆と濃密な共鳴
『in chelsea』15周年を記念するこの夜に、全国各地から駆けつけた観客の多くは美容師や美容関係者。なかでもクリエイションに情熱を注ぐ人々が多く集まったのは「照屋塾」を通じてつながる仲間の存在が大きい。一方、小誌編集部も含め、美容ジャーナルやディーラー、メーカーなど、多様な関係者も続々。照屋氏を慕う人たちの絆が会場を埋め尽くした。そして、この夜会場となったのは演者と観客の息遣いが近く、ステージの熱を「体感」できる小劇場。大きすぎず、親密さを失わないを間がむしろ、人の感情や所作を際立たせ、ステージに一体感を生み出していた。
“棘”を抱える仲間たちとの共演
タイトル「棘」には、照屋氏自身の内面が映し出されているように思う。創作に伴う痛みや葛藤、他者と異なる道を選ぶ孤独——それでも貫きたい美意識。ステージに立つスタイリストたちは、それぞれがもつ“棘”を抱えながら、美容の技を通してその痛みを昇華して魅せた。ヘアデザイン、衣装、映像、音楽が交錯しては重なり、ひとつの舞台芸術として結晶していくステージ。フィナーレは照屋氏が自らカットを披露し、MOMO氏がピアノ演奏で共演。そこに師弟関係を越えたチームとしての『in chelsea』の“家族力”を感じた。「家族のような仲間たちと創り上げた最高の時間」と語った照屋氏の言葉どおり、サロンとは単なる職場ではなく、共に生き、共に創る仲間の集まりなのだと感じた。
クリエイティブの灯は消えず
名古屋という土地から発信を続けてきた『in chelsea』は、中部エリアの美容クリエイションを牽引してきた。地域に軸足を置きつつ、志を共にする全国の美容師たちとつながり、学びと刺激を共有しながら歩んできた15年。その歩みの延長線上に今回の「棘」がある。創造には痛みが伴う。だが、その痛みを恐れず、あえて“棘”を抱いて前へ進む。その姿勢こそが、『in chelsea』の美学そのものだ。彼らの挑戦は、さらに深く、遠く、続いていく。

photo & text:PREPPY