




“リアルトレンド大賞2024-2025” PREPP Y部門グランプリ受賞インタビュー|KURIHARA TAKASHI(PEEK-A-BOO)
今年3月に開催された『リアルトレンド大賞2024-2025』PREPPY部門において、
見事グランプリを射止めた『ピーク•ア•ブー』栗原貴史さん。
受賞記念として開催されたフォトグラファー松山優介さんとのシューティングでは、
栗原さんが3年前からあたためていたアイディアを形にしていただきました。
作品に乗せた、栗原さんのさまざまな思いをインタビュー。
今回の作品は、感謝の想いを込めて読者の方々、すべての美容に携わる方、チーム『PEEK-A-BOO』に捧ぐ ——栗原貴史

『ピーク• ア• ブー』銀座並木通り店アートディレクター。国際文化理容美容専門学校渋谷校卒業後、2003年に『ピーク• ア• ブー』入社。2020 年アートディレクターに就任。サロンワーク、撮影、セミナーやWEB アカデミー講師と幅広く活躍。サロンが誇るベーシックカットを軸に幅広い技術で支持され、美容師の顧客も多い。JHA など受賞歴多数。Instagram: @kuri0804
感謝の花束を届けるような気持ちで
今回選んだテーマは「センス・オブ・ワンダー」。これは四季のうつろい、自然の変化や未知のものに対する驚きや畏敬の念を指す言葉です。この感覚は子ども時代に多く見られるらしいのですが、忙しい毎日を駆け抜けている大人も、こういう感覚を忘れずにいると人生がより豊かになると思い、テーマに選びました。 同時に、今回「リアルトレンド大賞」でグランプリをいただけたのは、多くの美容を愛する方々が投票してくださったおかげです。みなさんに僕から感謝の花束を届けるというイメージも重ねました。
作品の中で使わせていただいたアートは、kubomiさんというアーティストの作品です。3年ほど前に、東京・新宿でこの作品の展示を偶然見かけました。大都会の雑踏の中で異彩を放っていたこの作品に、まさにセンス・オブ・ワンダーのような衝撃を受けました。すぐに作者のkubomiさんに連絡をとり、いつか作品でコラボしたいと構想を練っていたところ、今回すばらしいチャンスが巡ってきました。実験的な撮影でしたが、カメラマンの松山優介さんに僕が表現したいイメージをしっかり汲み取っていただき、すてきな作品に仕上げていただきました。
グランプリの意味とこれからの僕の責任
今回の「リアルトレンド大賞」は、誰が優勝してもおかしくないくらい、本当にレベルの高い作品が並びました。自分ができることを直球勝負で悔いなくやりきり、そこに結果もついてきたことがとても光栄でありがたかったです。
『ピーク•ア•ブー』はベーシックカットを大切にするサロンとして、業界の中でもしっかり認知されていますが、だからこそクラシックなイメージを持たれることも少なくありません。歴史あるサロンとしての誇りを持つと同時に、柔軟に新しいことに挑戦するサロンであることを、改めて知ってほしい思いもありました。「リアルトレンド大賞」の12名にノミネートされたこと、さらにそこでグランプリを受賞できたことで、サロンのイメージもブラッシュアップできたとしたら、個人的にとてもうれしいです。
僕がクリエイションを始めたのは30前後になってから。それまではサロンベースの作品が重視されていた時代で、正直クリエイションに興味を持てなかったのです。でも、時代の移り変わりの中でふと感じたのが、将来美容人生を振り返ったときに、自分の軌跡になるものがないのでは?ということ。僕という存在が人の心に残ったとしても、その人の生涯と共に記憶も消える。作品を残せば自分が存在していた証も残せるなと思って。当時は祖父の死などもあり、ちょうど人生観を見つめるタイミングでした。美しいけどはかないもの、徒然で動いていくけれど残していきたいものを、作品に落とし込んでいきたいなと思いました。
また、サロンの偉大な先輩方が切り開いてくれた道に甘えているだけでなく、僕らの世代も道を開拓して、次の世代にバトンを渡してこそ、サロンは繁栄する。そんな自負が芽生えてきた時期でした。
僕はサロン内での店舗異動が多かったおかげで、たくさんの先輩と関わりながら、間近で美容の真髄に触れてきました。ブラントカットでつくるコントラストやフォルムは、自分のすべての作品の根底にありながら、これまで見てきたことを掛け合わせて自分らしさを今も模索しています。同じように、僕も後輩たちに美容の楽しさを伝えていくことが、自分の責務だなと感じています。
Artwork provided by …

kubomi|くぼみ。アーティスト。文化服装学院卒。溶け合うようなタッチで花や生物を描く。国内外で作品を発表するほか、コラボやディスプレイのアートなども手がける。「万物は記憶から成る」という考えを軸に、ミクロな視点で生命を描く。Instagram: @kubomi

松岡修平|まつおかしゅうへい。空間演出家/ディレクター/クリエイター。『Knon(空虚)』─「あらゆる存在がそこではあるということを許容される」という概念を命題に、デジタルとアナログ、さらにはマテリアルを融合し、五感を研ぎ澄ます空間インスタレーション体験を創り出す。Instagram: @shuhei_knon
photo:Matsuyama Yusuke (CHIYODA S TUDIO) m ake-up:Takasaki A oi、Kinoshita M isaki(PEEK-A-BOO) t ext:PREPPY