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14 Dec 2025
14 Dec 2025
lifestyle
           

「美を生きる 。」ウィッグメーカー・ヘアスタイリスト/YUTA KITAMURA

表現の世界で生きるプロフェッショナル一人ひとりに宿るの哲学に迫る。

ウィッグメーカーは、
人工物に命を与える仕事

名前 YUTA KITAMURA ユウタ キタムラ
肩書 ウィッグメーカー/ヘアスタイリスト
Instagram@yutakitamurahair
Instagram@tokyo_wig_maker

1984年 新潟県見附市で誕生。
2004年 早稲田美容専門学校卒業。
2011年 都内2店舗を経て、ヘアスタイリストに師事。ノウハウを学ぶなか、ウィッグの奥深さを知る。
2017年 ヘアスタイリストとして独立。マガジンやルックブックで活動する。ウィッグ制作にも携わる。
2019年 イギリス・ロンドンにあるLONDON SCHOOL OF WIGMAKINGに短期留学。
2020年 コロナ禍、活動が制限されるなか、ウィッグ作品をSNSに投稿。
2025年 アーティストへのウィッグ提供やスタイリングを行い、注目を集める。

を形にする、5つのヒント
Q1 あなたにとってのとは?

余白、色気。きれいにつくったものではなく、きれいに仕上げられたものがちょっと乱れたときの様子。そこに色気を感じるし、それが美しさに。

Q2 仕事で大切にしていることは?
クライアントの意向を読み取ること。サロンワークのカウンセリングよりシンプルです(笑)。

Q3 創造力の源は?
心を動かされるものを、見たり聴いたり体験すること。最近は、自然を見ることで気持ちをリセットできます。

Q4 センスを鍛える方法は?
知識を増やすこと。技術や情報の組み合わせで形がつくりあげられるから。

Q5 ハマっているモノ・コトは?
農作業。

色気を感じさせる
動と静の狭間にある余白に
が存在する

ヘアスタイリストであり、ウィッグメーカー。雑誌・広告・コマーシャル・舞台など、幅広いフィールドでオーダーメイドの手植えウィッグとヘアスタイリングを手がけるYUTA KITAMURAさんのを探る。

ヘアスタイリストとして知ったウィッグの魅力

「7年間サロンワークに従事した後、ヘア中心の現場で活躍する師匠に師事。6年後、ヘアスタイリストとして独立したのですが、思うような仕事に恵まれず、行き詰まりを感じていました。そんなとき、イギリス・ロンドンでウィッグ制作を学んだ方の話を聞いたのです。僕自身、師匠のもとでドラァグクイーンのウィッグを加工したり、広告の現場でウィッグを扱う機会も多く、ウィッグ表現のおもしろさに前々から惹かれていましたからね。それで、ウィッグを極めたいと思い、ロンドンのウィッグメイキングスクールへ留学。現地で学んだのは、人頭のような自然な毛流れを再現する緻密な技術。完成度の高さに衝撃を受け、ウィッグの魅力に一層のめり込みました。帰国後は、バイトをしながら作品をつくってはSNSに投稿する日々。しかし、翌年、コロナ禍に。ただ、ベースウィッグを仕上げるには、15万本の髪を1本ずつ毛流れをつけながら手植えしていくため、1週間~10日間ほどかかるんですよ。だから、コロナ禍でゆっくり考え、制作する時間ができたため、いい時間をもてたと思います」

有名アーティストにウィッグを提供

「少しずつ、いろんな方面からオーダーが入るようになり、有名アーティストのミュージックビデオ制作に関わったことからSNSでも注目されるように。そのときは、衣装スタイリストさんから、何通りもヘアチェンジを行いたいので協力してほしいとオファーを受けたんです。その後、ウィッグ制作技術をもっと広めたいと思い、日本初のウィッグメイキングスクールを立ち上げました」

とは、余白のなかにある色気

「隙のない完璧なものも美しいのですが、例えば、髪が風でなびいたときに顔にちょっとだけかかった髪や、朝の寝グセが少し残っていて妙に色っぽい様子だったり、作為的ではなく、無意識に形づくる髪の動きや質感にを感じます。だから、僕もドキッとする瞬間をウィッグで表現したい。そんな余白のある色気を作品に落とし込んでいきたいですね。
 おかげさまで、ウィッグ制作はもちろん、フィッティングやメンテナンスのためにアーティストのツアーに同行するなど、多忙な日々を過ごすことができています。しかし、仕事が充実している反面、自由に創作する時間がもてないのはジレンマではありますけどね(笑)」
美しさとは、ただ完成された姿にあるのではなく、その過程にある動きや揺らぎ、そして余白に宿るもの――それは、ウィッグという人工物を扱っているからなのか、 YUTA KITAMURAさんの言葉からは生命力への眼差しが強く感じられた。

アトリエに置かれているさまざまなウィッグ。ウィッグだからこそできるクリエイティブを楽しんでいる。

My Origin
ロンドンで学んだウィッグ制作の技術

イギリス・ロンドンに留学したときは、日本で知ることのできない技術の数々に衝撃を受け、毎日朝から晩までウィッグ制作に没頭した。

My Work
生え際まで美しいウィッグによるヘアデザイン

既製品のウィッグでは、ヘアデザインはもちろん、モデルへのフィッティングでもリアルに近づけることは難しい。しかし、ベースから仕上げるウィッグならそれが可能に。

My Work
サロンワークは自分の原点

クリエイティブな仕事をしていても、長く通ってくださるお客さまのカットを今も行う。美容師としての原点であり、続けていきたい仕事だそう。

photo:Yasuda Yuri text:PREPPY

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